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掲載日:2023.08.22
≪ドロップアウトの現状把握の課題≫
米国では1992年に全米教育統計センターによってドロップアウト率を示す指標が統一され、その後、国、州、学校区、学校における取り組みや事業の成果を示す指標として用いられることとなった。指標が統一された1992年に11.0%であった米国全体のドロップアウト率は、その後減少し、2020年には5.3%となっている。
とりわけ、貧困との関連が指摘されてきたマイノリティーのドロップアウトの減少が著しい。
黒人13.7%➡4.2%、ヒスパニック29.4%➡7.4%へと減少している。
ここでいう「ドロップアウト率(Status Dropout Rates)」は「16歳から24歳の人々のうち、高校に入学していない人および高校の卒業証書または同等の資格を得ていない人を合わせた率」である。
一方、文部科学省が公表する日本の「中途退学率」は1~2%で推移している。
この数値は、本連載①で触れたように、全国の高等学校の在籍者を分母としたときの中途退学者の割合である。転編入先で除籍に至る生徒は含まず、所定の手続きにより退学に至った生徒に限られている点、単年度の在籍者中の率である点により、実際のドロップアウト者の率よりかなり低くなっている可能性がある。
本連載②で報告した筆者調査では、地方の一地域の高等学校4校において卒業予定年度末まで追跡調査を行い、入学者の中で卒業に至らなかった生徒の率を算出した。対象は限定されているが、ある集団の中での非卒業者という点で、米国で一般的に用いられている「ドロップアウト率」の考え方に近い。
また、調査の結果、退学者の率は6.2%であった。
この結果が全国の状況を反映したものかを検討するため、国の公表データを組み合わせ、卒業予定年度までに中途退学に至った生徒の率を推計した。
その結果、全国の高等学校入学者のうち、約6%の生徒が中途退学に至っていた可能性が示唆された。筆者調査では、退学者・転学者・休学者を合わせると、入学した学校で卒業に至らなかった生徒は10.0%に上った。地域や学校によっても異なるものの、ひとたび入学を志して在籍した学校から1割の生徒が去っているという現実は、国の公表する1~2%という「中途退学率」の実態とはかけ離れたものといえる。
くわえて、日本社会には、小中学生の段階から学校から離れている子どもたちも存在する。その中には、フリースクールやオルタナティブな教育を受けている子どもたちも含まれていると考えられる。全体として、どのぐらいの人数の子どもたちが高等学校あるいはそれと同等の学びが保障されない中にいるのか、不明である。日本において、教育におけるドロップアウトの現状の把握は喫緊の課題といえる。